脳科学、ニューロサイエンスとも言われる“ブレインテック”関連事業を推進している株式会社メディアシークが、「ブレインテック カオスマップ2020」を作成しました。
ブレインテック関連市場を“BMI、BCI、センサー”、“教育、スポーツ”、“睡眠、音楽、瞑想”、“働き方、生産性”、“ヘルスケア”、“ニューロマーケティング”、“エンタメ、コンテンツ”、“研究開発、実証実験”といった注目の8領域に分類、合計で45の企業・サービスを掲載しています。
ブレインテックとは
脳神経科学とITを融合させ、脳波などから脳の状態を分析することで、より良い睡眠や効率的な学習などにつなげるサービスです。
近年各国が脳の全容解明を掲げて脳神経研究を後押ししていることもあり、脳の各部位の働きや脳のネットワークについて分かってきました。ブレインテックは、脳波や脳血流、あるいは瞳孔の動きなどから脳の状態を「見える化」し、その状態に基づいてトレーニングを行ったり適切な刺激を脳に与えたりすることができます。
能力向上だけでなくヘルスケアの分野ではアルツハイマー病などの脳疾患の治療につながることも期待されており、ブレインテックの市場規模は三菱総合研究所の試算によると2024年には5兆円規模になるとの予測もあります。
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20180720.html
カオスマップ作成の背景
ブレインテックが伸びてきた背景にはアメリカ、中国、EUなどが進める脳科学研究の大幅な進歩があります。その研究成果を受けて、大企業を含め様々な企業が新しいサービスの研究、開発を行っています。脳に関わるサービスということで、ヘルスケアからエンタメに至るまでそのサービス分野は多岐にわたります。
今回、日本企業を中心に海外の有名企業も押さえながら、ブレインテックに取り組む企業のカオスマップを作成しました。
ブレインテック市場の動向
アメリカでは「Brain Initiative」という官民一体の国家研究プロジェクトが進んでいます。2025年までに人の脳の働きを解明してアルツハイマー病などの脳疾患の治療方法を確立することを目指しています。サービスの動向としては、能力向上と睡眠の質の向上が中心で、特に能力向上についてはオリンピックチームやプロスポーツチームが積極的に練習に組み入れています。他に興味深いところでは、アメリカの国民課題である肥満についても、ブレインテックで解決できるのではというサービスもあります。
中国は「China Brain Project」で脳神経研究を行っています。神経科学の研究を進めることで、脳疾患の治療とBMI(ブレインマシンインターフェース)研究に役立てようとしています。国としての特色はAI(人工知能)研究に特に力を入れていることで、現在の深層学習を基とした「弱いAI」ではなく、脳の働きを模したコンピュータであるニューロモーフィックコンピュータなど次世代の「強いAI」のためにも研究に力を入れています。サービス動向では脳波でドローンを飛ばすというエンタメ色の強いものから、学校のクラス全員が脳波計をつけて授業に臨むという教育の分野まで幅広く浸透しつつあります。
EUで行われているのが「Human Brain Project」です。テクノロジーで脳をシミュレートすることで脳を理解し、社会的課題の解決を目指しています。サービスでも睡眠の他にストレス軽減などを目指す商品も出てきています。
日本では理化学研究所が中心となった「Brain /MINDS」などの研究プロジェクトがあります。優れた基礎研究が多数報告されていますが、他国に比べて医療のハードルが高いためにヘルスケアの分野のサービスは浸透が遅れているようです。一方アンケートだけでは汲み取れないユーザーの生の反応を脳から計測することで補う「ニューロマーケティング」が活発で、商品のパッケージデザインやTVのCMに活用しやすいこともあって、多くの企業が取り入れています。
ブレインテックの中でも注目度の高い分野
毎年1月にラスベガスで開かれる世界最大の展示会CESにも年々出展しているブレインテックサービスは増えているのですが、その種類を見ても、特に伸びているカテゴリを紹介します。
1) 教育・スポーツ
計測した脳の状態を映像や音で分かりやすく伝えるニューロフィードバックという技法があります。もともとADHD(多動性症候群)やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療などに使われていましたが、センサー技術が発達し病院に行かなくても手軽に脳波や脳血流を計測できるようになったことで、ニューロフィードバックを教育やスポ―ツで能力向上トレーニングに活かすことができるようになりました。また、脳の特定部位に電気刺激を与えることで脳の可塑性に影響を与えて学習効率を上げるといったサービスもあり、これらをアメリカのオリンピックチームやプロスポーツチームが練習に導入しているという事例もあるため、注目が集まっています。
2) 睡眠・音楽
睡眠の分野は、スマートウォッチによる眠りの質のトラッキングや、より快適な眠りのために快適な温度に自動調整するスマートベッドなど興味深い製品が多く出ていますが、ブレインテックと非常に相性が良いと言えます。脳波を計測すれば簡単に眠りのステージが分かるため、より良い睡眠のためのアプリと連動する脳波計デバイスが注目されています。
音楽についても、音楽が脳に与える影響の研究は多くあり、また音楽は脳に刺激を与える最も簡単な方法の一つということで、注目を浴びています。リラックスや集中など、シーンに応じて望ましい音楽を自動で選んでくれるようなサービスも出てくるかもしれません。課題は、好みなどによる個人差です。データが集まれば集まるほど分析と予測は正確になっていくため、どこまで浸透するかが鍵となってくるでしょう。
3) ヘルスケア
規模は最も大きいものの、医療まで踏み込むとどうしても時間がかかってしまうため、今後成長が期待できると言えるでしょう。脳に電気刺激や磁気刺激を与えることで記憶力が回復したというような研究は増え続けているので、これらの研究に基づく製品が日本に登場するのも時間の問題と思われます。海外では、既に認知症予防やメンタルトレーニングなどの分野でFDAの医療機器認定を取得したブレインテックサービスなども登場してきています。
※マップ記載のロゴ・サービス名称の表記につきましては、各社様に事前許諾を得たものを掲載させていただいています。使用上問題がある場合は、恐れ入りますが「 braintech@mediaseek.co.jp 」までご連絡ください。
※このカオスマップはブレインテックに関する取り組みを実施している企業のプレスリリースや製品サイト、導入実績などの公開情報を基にメディアシークが独自の視点で取りまとめたもので、網羅性や正確性を完全に担保するものではありません。